京都大学・京都大学大学院
工学研究科 建築学専攻 卒業
牛山 あやか
地方都市では、建物のリノベーションによって⼈の流れを作り出すことで地域活性化の⼀助となることを目指しています。そのためにも、現地を実際に訪れたり特産品を調べたりしてイメージを膨らませ、何をどのようにデザインに落とし込むか、どの要素を目玉にするかをチームで話し合って考え、企画やデザインを練るんです。 例えば、ホテルグランシェール花巻では、花巻出身の宮沢賢治を全面に押し出して、「銀河鉄道の夜」などの作品のモチーフをデザインに取り入れつつ、花巻の⾃然豊かさも表現しようと、岩⼿県の木材を使った家具を製作してロビーなどに導入しました。
他にも、三重県津市のグランスクエア津という事務所物件では、着物の絵付けに使う模様をサインの中に組み込んだり。ともすれば衰退してしまう⽇本の伝統⼯芸を積極的に取り入れることで多くの⼈に知ってもらい、歴史を次世代へ繋ぐ機会を提供できたらという想いもあります。ひとつひとつの取組みが「地域と建物の物語を紡ぐ舞台をつくる」ことに通ずると信じています。
デザインする上で一番大切にしているのは、建物を使う⼈に喜んでもらうことです。使う⼈が⼼地良くなければ選ばれる建物にはなりません。そのためには情報収集が重要です。
ショールームや展示会に⾜を運んだり、地⽅都市の場合は必ず地元のセレクトショップを覗きに⾏ったりして、カタログにも載っていないその地域らしさをたくさん⾒つけられることもあります。初めて一緒に仕事をするデザイナーさんがいる場合は、その方が設計した建物を実際に⾒に⾏き、何を⼤切にしている⼈なのかを⾃分なりに理解するようにしています。何事も⾃分が「いい!」と確信できなければ他の人にも「いいね」と思ってもらえませんから。
愛知県安城市にあるホテルグランドティアラ南名古屋を担当したときに、施⼯業者さんからすごく幅広い質問を受けました。スケジュール通りに進めるため「今これをやっておかなければならない」「これを考えておかなければならない」という施工業者さんの立場からの見え方があることにあらためて気付かされましたし、「現場の方々はこういう部分を気にしながら施⼯しているのか」と、とても新鮮に感じた経験でした。
デザインや設計は机上の空論になりやすいところがあるといわれます。それを実現してくれるのが現場の方々であって、私が描いたものをどうやって実現させるのかを話し合っていくことがとても楽しい。「⽴場が異なれば⾒え⽅が違う」という、当たり前ですが新しい視点を持てたことで、デザインや企画をもっと深く学び、施工業者さんと一緒になって建物を作り上げたいと思うようになりました。