#1ホテル 津センターパレス(津市)
江戸時代から伊勢街道の宿場町として栄え、日本三大観音のひとつに名を連ねる『津観音』の門前町、津市大門エリア。ここは、かつては三重県を代表する繁華街でした。しかし、郊外型ショッピングセンターの台頭により徐々に商店街が分散した結果、中心市街地は空洞化が進み、街は徐々ににぎわいを失っていったのです。
この事態を受け、再び大門エリアを盛り上げようと、昭和60年に街のシンボルとして第三セクター方式で建設されたのが、津センターパレス。開業当時は地元の専門店をはじめ、津都ホテル(当時)、ダイエー、津市センターパレスホールなどが入居。津市の観光とコンペンションの核であり、大門エリアのシンボルとして市民に親しまれてきました。
ところがその後、津都ホテルを直営してきた近鉄グループが経営難により当ホテルを閉鎖する方針を発表。そしてこれに対し、都ホテルの存続を求める地元経済界の強い要請を受け、地元企業も出資する形で設立された株式会社津センターに営業を譲渡したものの、新型コロナウイルス感染拡大の打撃を受けて経営が悪化し赤字が大幅に拡大。令和3年1月29日株式会社津センターの撤退も決定してしまったのです。
そんな津都ホテルとリオの出会いのきっかけは、あるホテルコンサルティング会社からのご紹介。実際に現地に赴いて確認したところ、昭和60年に竣工したホテル部分もまだまだ現役で使用できる大変立派なものでした。そんな中、津市長の前葉泰幸さんから「津センターパレスは津市の『一丁目一番地』。ここの再生なくして津の再生はない。」との言葉をかけられたのです。私たちは、前葉市長や株式会社津センターパレスの皆様の「津にかつてのにぎわいを取り戻したい」という強い想いに深く感銘受けました。そして、この建物であれば、このエリアであれば、必要な投資をして運営を強化することで、ホテルの再生とともに大門エリアに賑わいを取り戻す一助となれるだろう、と判断し、ともに津市を盛り上げる伴走者として走り出すことになったのです。
津センターパレスの再生に向けリオがまず取り組んだのが、ホテルのリノベーションでした。
デザインは国内外で多数のホテルの設計を手掛ける寶田 陵氏(the range design INC.)に依頼。かつて宿場町・門前町としてにぎわった大門エリアの賑わいをコンセプトとして改修工事を実施、「Hotel 津 Center Palace」と名称を変えて2022年4月にリニューアルオープンしました。
エントランスとロビーは人々が集まる場所としての華やかさ、居心地の良い温かみをイメージし、たくさんの種類の生き生きした植物や家具、木の素材感を生かして宿場町の賑わいを表現しました。地元芸術家のアート作品を設置したり、地元書道家によって作成されたロゴマークを使用するなど、随所に津市を感じられる工夫を施しながらも、都会的で洗練された空間に生まれ変わりました。また、余剰スペースのあった階をまるごと大浴場にするなど、大胆な改修も行いました。露天風呂から伊勢湾を望むことができるのも売りの一つです。
改修工事は、地元津市の老舗であり大門商店街の建設にも携わった株式会社辻󠄀工務店に依頼。同社は津都ホテルも頻繁に利用されていたこともあって、灯の消えたホテルに再び火を灯し、津を元気にしたいと地元愛にあふれる想いで改修工事に取り組んでくださいました。オペレーション面では、株式会社リオ・ホテルズが建物を借り上げた上で自社運営しています。リサーチしたところ、津市は企業の接待などの需要もありながら、高級レストランが無いことから他市・他県の高級レストランへと流れてしまう傾向がありました。そこで、行政機関や企業を訪れるアッパービジネス層をターゲットに見据え、上質な客室とレストランにより、津で一番のホテルを目指したブランディングを進めました。
レストラン「黒がね」では、数々の高級ホテルで腕を振るった料理長を迎え、こだわりの地元食材をふんだんに使用したコース料理でおもてなし。ワンランク上のレストランとして接待需要の獲得を狙っています。
また、朝食・ランチを提供するレストラン「EMI」では、「黒がね」と同じく、素材や調味料まで地元食材にこだわった名物料理や郷土料理を提供しています。かつて万葉集で「御食つ国(みけつくに)」と詠まれた三重の“食”の魅力をアピールし、顧客の獲得につなげています。
そのほか、津センターパレスに隣接する市営フェニックス通り駐車場の指定管理者として業務委託を受け、津市と協力して駐車場の利便性を高めることにも取り組んでいます。今まで、三重県への旅行者は伊勢・志摩の観光を目的とされている方が大多数でしたが、Hotel 津 Center Palaceができたことによって、津を拠点に三重県を周遊して頂けるようになればと考えています。
なお、従業員のうち70名程度を津市内で募集し、地域の雇用創出にも貢献することができました。総支配人には四日市市出身の方をお迎えするなど、「津市にぎわいを取り戻す」という志を持つ方々と力を合わせ、ホテル運営に取り組んでいます。
こうしてホテルのリノベーションは完成し、舞台は整いましたが、それだけでは津センターパレスの再生は叶いません。
「地域を活性化する」という目的を実現するためにこのホテルがある。
そんな思いを胸に、ホテルとして何か地域社会の役に立つことができないか、常に考えていました。
ただ、考えているだけではなかなか前に進みません。
そこで急遽、Hotel 津 Center Palace のグランドオープンから1周年を間もなく迎えるというタイミングで、その記念すべき日、2023年9月1日にイベントを開催する企画を立ち上げることにしたのです。
もちろん、簡単にはいきませんでした。というのも、ホテルとしてはリニューアルオープンからまだ日も浅く、認知度が十分とはいえず、集客の面でも不安がありましたし、何より、開催予定日の2か月前の時点でイベントの内容も白紙の状態だったのです。
それでもどうにかして間に合わせたいと考えを巡らせると、まもなくしてアイディアが浮かびました。
ここは、「地域愛を表現する舞台」。
ならば、ホテルとして独自でイベントを主催するというよりも、舞台を提供して、地域の方々が楽しめるように使っていただくのはどうだろう。
奇しくも、津市では 2023年3月に官民合同の組織として「エリアプラットフォーム『大門・丸之内 未来のまちづくり』」が構成されたばかりでした。このエリアプラットフォームにイベントの提案を持ち込んだところ、ちょうどエリアプラットフォーム側でも「何かできないか」と検討がされていたこともあり、一気に話が進むことになったのです。
そうして、Hotel 津 Center Palace も構成員であるエリアプラットフォームにて、イベントの企画が立てられました。
考えたのは、地域の飲食店によるブースの出展と、地域に古くから伝わる芸事の催し、そして集客の幅を広げるために子どもや若者による催事も加え、津市の魅力を引き出すイベントです。
当初はすぐには賛同を得られなかった地域の方々にも説得を重ね、やがて「賑わいを取り戻そう」と皆の思いがひとつに。
そうして、晴れて「レッ津!ローカライズ!フェスティバル 2023」を開催することができたのです。
当日は、イベントのスローガンにも掲げていた「賑やかが、恋しくて」がそのまま形になったような大盛況でした。
演目の冒頭では津市長の前葉泰幸様にもご挨拶をいただき、次々に来場者数が増える中、無事開宴のときを迎えます。
天むす発祥の店「天むすの千寿」や、津ぎょうざ・津観音名物鶏ごぼう飯の「飯処しるべ」、いちご大福発祥の店「とらや本家」をはじめ、飲食店 22 店が出展し、芸事では地元に古くから伝わる津音頭や津太鼓の演目に、郷土芸能の津しゃご馬や八幡獅子舞もお目見え。
ほかにも、幅広い年代の方々に楽しんでいただけるよう、K-POP ダンスやチアリーディングなどを加え、会場は歓声と手拍子に包まれていました。
赤ちゃんから大人、ご高齢の方々まで大勢のお客様が訪れ、「津のうまいもんと芸事の祭典」を大いに楽しみ、津の魅力を再発見いただけるイベントとなりました。
「宿場町・門前町として栄えたかつての津市大門エリアのにぎわいを取り戻したい。」これが、本プロジェクトに関わる全員に共通する想いです。リオはこれからも、津の行政や地元企業、地域の皆様とともに、ホテル津センターパレスを起点として人々の流れを生み出していきたいと考えています。